彼女と私。

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「りぃちゃん!! 」  ぼーっとしていると、背後から名前を呼ばれた。 この声は彼女だ。 「みっちゃん、結婚おめでとう」 「ありがとう! なぁ、写真撮ろ、写真!! 」 「うん、撮ろう!」 「たっくん、写真撮って!りぃちゃんと!」 新郎である彼にインスタントカメラを手渡すと、みっちゃんが腕を組んでピースする。 「拓也くん、ごめんなぁ。 私のもお願いしてええ?」 「もちろん、カメラ貸して」 差し出したカメラを彼が構えた。 「ほな、撮るで~」 「みっちゃん、約束守ってくれてありがとうな」 シャッターが下りる前に、カメラに笑顔を向けたまま、ポツリつぶやいた。 「……うちがりぃちゃんとの約束を破るわけないやん」 ふふ、と思わず笑みがこぼれたところでシャッターが下りる音がする。 「あ、すまん。 もう一枚撮るわ」 どうやら目をつぶった時にシャッターが下りてしまったらしい。 再び構えたカメラに、ポーズを取る。 「私な、小学校の時からみっちゃんのこと好きやったんやで」 遠くからみてるだけやったけど、と囁けば、彼女は驚いた様子でこちらを向いた。 「りぃちゃん、そんなん今言うんせこいわ」 「……知ってる」 今度こそ、笑顔でピースサインをする写真を撮り、一度離れる。 蒼天の空の下、私は初恋に別れを告げる。 叶わない初恋は、初恋相手の笑顔に少し救われた気がした。 「みっちゃん、約束や。 私以外に好きになった人ときちんとお付き合いして、いつか結婚するときは笑顔で私に会いに来て」 遥か昔、彼女から告白された時に伝えた“約束“ 。 彼女は忘れず、今日果たしてくれた。 だから私もこの恋に「さよなら」と告げる。 そして、これからも彼女の親友として共に笑い合いたい。
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