破壊と創造

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??現実世界-怜 冬の寒空が肌を痛めつけているが、そんな感覚を失わせるほどに込み上げる怒り。全て吐き出すように声を出す。 「もういい!!お前のお涙頂戴話は大方理解した!それで!?俺がお前を許すとでも思ってんのか?」 だが怒りをあしらう様に、イブは冷たい眼差しで俺の顔を見ている。言い訳の様にこれまでの経緯を話して、言い訳もしない顔でだ。 これまでの話を聞けば分かる。ミシェルという人物がイブ、そしてリアムという人物がクリエイターだろう。だがこの話が本当であれ嘘であれ、地球が滅亡するにしろしないにしろ、そんなものは俺たちには関係ない。 一つだけ言えることは、イブは俺の仲間を殺し、俺たちの人生を破壊した。 「イブを殺す!!」 そう言い俺は握った拳をイブに振り抜こうとする。が、それを止めたのはアダムだった。 驚いた表情を見せてアダムの顔を見ると、アダムは対照的に悲しい表情を浮かべていた。 そんなアダムでさえ怒りがこみ上げる。仲間を殺したイブを守ろうとするアダムに。 だが最高潮に達している怒りを沈静化する様に、アダムは衝撃的な一言を口に出す。 「ワタシも同罪デス。今まで忘れてました。自分が何者かを。‥‥ワタシは間違いなく、ミシェルの兄デス。」 「‥‥は?」 意味がわからなく、頭が真っ白になる。理解が追いつこうとしない。さっきまでイブが話していた過去が全て脳裏に蘇るが、それでもなお理解が出来ないのだ。 冷たい空気を勢いよく通り過ぎる風。その音だけが大きく聞こえる。だが感覚もなければ感情も湧かない。 そんな俺を置いて、イブはさらに話を進めた。 「僕の口から最後まで聞いた方が良かったと思うけどな、途中で話を折るから理解が追いつかないんだよ。」 「‥‥意味がわからねぇ。バカにしてんのか?お前もだアダム!天然も大概にしろ!ここまで空気の読めないヤツだったのかお前は!」 怒りの中で少しでも冷静になれる様な言葉を出したつもりだ。アダムが本当にただの「空気の読めないヤツ」であることを願った。
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