破壊と創造

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だがもちろんそうではなかった。アダムが首を横に振りながら涙をこらえていると、再び代わりにイブが話し始める。 「早い話が、アダムはゼロスのDNAから作ったクローン人間だよ。‥‥もう一回続きを‥‥」 イブが何か話し続けているが、最初の部分以外頭に入ってこない。その後警察と一緒にどうたらとか、俺たちの誘拐計画がどうたらとか。もう憶測が済んでいる話をしているのだろう。 それからどれだけ長い時間イブが過去の話をしていたのかは分からない。だが少しずつ頭を整理させ、結果的に全ての怒りはイブに対しての怒りとなる。 「うるせぇよ‥‥。」 「だ~か~ら~話を折らないでよ。もうあらかた予想はついてるだろうけど、一応最後まで‥‥」 「うるせぇんだよお前!長ったらしい言い訳してんじゃねぇ!さっきも言ったがそんなことで俺がお前を許すとでも思ってんのか?それとも何か?俺の気持ちが少しでも治ればなんて思ってんのか?治らねぇよ!お前をぶっ殺すまでな!」 なりふり構わずイブの胸ぐらを掴み上げるが、相変わらずイブは無表情のままだ。そんな態度にさらに怒りが増幅し、俺はとうとうイブの顔を思い切り殴りつける。 倒れこむイブに対し、追い討ちをかける様に跨るがまたアダムが俺を止める。アダムは何も言わずに‥‥いや、何も言えずに俺の腕を掴む。俺はそれを振り払い冷たく言い放つ。 「お前もだよアダム‥‥。クローン人間だから関係ないのか?お前はゼロスなんだろ?お前も俺たちをこうした当事者の1人なんだろ!よくも今まで何も知らないふりして俺たちと一緒に居れたな!」 やはりアダムは何も言い返せず、ただ黙って俯く。それにすら苛立ちを覚え、俺は次にアダムに殴りかかろうとする。が、それを止めたのはまた別の人物だ。 「桃城怜ぃ。お前いい加減にしろ。世界を救うためだぁ。てめぇらの薄っぺらい友情ごっことは訳がちげぇんだよクソガキぃ」 「おめぇは引っ込んでろよ。後でお前もちゃんと殺してやるよ信長ぁ。薄っぺらい友情?お前に何がわかるんだ!?」 「見ればわかる。ただゼロスのクローンってだけで、今まで記憶のなかった仲間に殴りかかろうとするような友情だろぉ?」 睨み合う俺と信長。信長は今にでも俺を殺しそうなぐらい険しい表情を浮かべているが、俺はそれ以上の感情を抱いている。 そんな中、相変わらず無表情なままのイブがようやく声を出した。
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