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「信長、もうその辺でいい。最後の仕上げだ。」
イブのその言葉を合図に、信長は俺の元へゆっくりと歩み寄る。と思ったが悠々と俺を通り過ぎて言った。目で追うと、信長は仲間の亡骸の元へと歩み寄っている。
俺は慌てて信長の元へ走り、怒号をあげる。
「信長!てめぇなにする気だ!仲間に指一本触れてみろ、ただじゃすまねぇぞ!!」
だが、イブが黙っていなかった。イブは走る俺の服を掴み、思い切り引っ張る。その外見とは裏腹の怪力により、俺は仲間たちとは逆方向に吹っ飛んだ。
「怜さんっ!!」
遠くでそう叫んだのはユリだ。ユリは今まで死んだ千秋の胸にうずくまり涙していた。それでも緊急事態と感じたのか、信長を必死に睨みつけ千秋の身体を守ろうとしている。
その身体は小刻みに震えているが、覚悟を決めているのは分かる。本気で千秋を守ろうとしているのだ。だからこそ危ない。
「ユリ!頼むからその場から離れて逃げろ!千秋は必ず俺が連れて帰る!」
再び信長の方へ走り出すが、ユリは聞く耳を持たずにその場からじっと動かない。だが信長はそんなユリを無視し別の人物の元へ歩み寄っていた。
大だ。死んだ大をゆっくりと見つめたかと思うと、信長はしゃがみこみ大の腕を掴む。
「てめぇ!やめろっつってんだよおおお!」
響く怒号も虚しく、信長は大の体を雑に持ち上げる。大の巨体はずっしりと持ち上げられ、身体はダラリと力なく項垂れている。
俺が大の元に駆けよろうにも、イブが俺を阻み動くことすらできなかった。
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