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●廃病院屋上-イブ
泣きじゃくる桃城怜の目線の先には、うつぶせに倒れながらも信長を睨みつける男の姿があった。指宿政宗だ。
それを見て対照的に安堵の表情を浮かべる信長。かくいう僕も表情には出さないものの、同じ気持ちだった。
つまり計画の一部は成功している。もちろん取り返しのつかない失敗もしているだろうが、それでも少しは安心できた。
「行きなよ。」
そう言い僕は桃城怜を離した。桃城怜はフラフラと歩きながら指宿政宗の元へ歩み寄る。その間に僕は信長の元へ向かった。
信長は僕の顔を見てニヤリと笑い、ゆっくりと頷く。対して僕は暗い声で呟いた。
「全員とはいかなかったか‥‥。」
この言葉を聞いた信長も少し暗い顔をした後、桃城怜に目線を移す。桃城怜は指宿政宗に抱きつき大声で泣いている。
その光景を見て僕がさらに暗い表情を浮かべると、信長は慰めるかのごとく声をかけてきた。
「仕方ねぇ。あそこには平家も御伽もいたんだ。俺も全力で探した。だがなによりあの2人も自分自身にとって大事な人間を守っんだ。」
「本望とでも?例えそうであれ、残された方はそうもいかないさ。特に姫野ユリはね。」
信長は何も返さずにその場にゆっくりと座り込みタバコに火をつけた。その間、桃城怜の泣き声が止む頃に僕はゆっくりと声を出す。
「最後の話だ桃城怜。聞くか?」
桃城怜はただ僕を睨みつける。だがしっかりと僕の声を聞こうとしているのか声を出さずに政宗を解放していた。
「イエスって事だね。まぁ簡単に話すよ。僕は嘘をついてた。創造世界で死んだ現実世界の人間は‥‥死なない。」
「え?」
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