五、現実

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五、現実

 なかなかお母さんが出て来ない。近くの待合所みたいなところに移動した。本棚があった。適当に雑誌でも読もうか。  お? 気が利いているね、月刊ボクシング情報があるじゃん。 『3月に名古屋体育館で行われた東洋ライト級タイトルマッチ。挑戦者、比嘉啓太(山賀ジム)は2RでTKO負け。試合後、救急搬送された比嘉は脳挫傷との・・・』  え? ヒガチンじゃん。よく復帰したな・・・知らなかった。 「宮田先生のところに行っているからね。もう勝手に出ちゃダメよ」  あ、お母さんが出て来た。 「美月さん」 「あれ? レイ君! どうしてここにいるの?」  良かった個室で。 「ごめんね。付けて来ちゃった」 「そう・・・。ありがとう、嬉しいわ」 「ここに入院していたの?」 「うん・・・」 「どこか病気なの?」 「私は大丈夫なんだけど、よく分からないわ。お母さんが連れて来たの」 「そうなんだ。こんなこと聞くのは失礼だと思うけど・・・」 「うん、なぁに?」 「ここは心療内科だよね。美月さんに何があったの? 話して欲しい」  美月さん、どうしたんだろう。 「覚えているのは・・・大きな社員食堂。月見うどん。優しい面影」 「え?」 「ウェディングドレス・・・ふたりのアパート・・・」  どうなっているんだ。彼女結婚していたのか・・・?
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