二、出逢い

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 今朝からの爽快感はきっと神様がこんな当たり前のことに気が付くように、僕の尻を叩いてくれたのかも知れない。素直にそれを受入れて自然なままに行動してみよう。今日から僕は工場勤務だけの冴えない男から卒業して、爽やかな行動力溢れるイケメンに生まれ変わるんだ。当たり前の20代の若者として、羽を伸ばそう。うん、身体も鍛えてみようかな。  そんなことを考えただけでワクワクして来た。いい趣味を持って、身体も鍛えて、ファッションにも気を配ろう。 「フー・・・」  さて何から始めようかな。今日はとりあえずご馳走を食べて、部屋に戻ってからプランを練ろう。 「あ・・・」  ミズキさんが僕に目配せをしてくれた。とりあえず会釈しておこう。 「あ・・・」  軽く笑ってくれた。え? 僕にだよね? 周囲に彼女の知り合いらしきはいないよね。願ってもいない更なる収穫じゃないか! 今日のテンションの僕ならこのまま声だって掛けられそうな勢いだ。  だけどお母さんが一緒じゃあ、さすがに無理だな・・・。こんな時、機転の利く奴はどんな行動するんだろ? いやぁ、このシチュエーションじゃ誰だろうが、どうにもならない。  いや、待てよ。そうだ、お母さんを巻き込んじゃえばいんじゃね? でもどんなネタで踏み込むんだよ。  服を褒める? 天気の話? 人違いのフリして話し掛ける?  それだ! 人違いのフリだ。これが他人にコンタクトを取る唯一の手段だ。誰と間違えようか? うーん・・・そうだ、実家の前橋のご近所さんって設定にしよう。よし、これなら自然だ。やってみよう。
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