28人が本棚に入れています
本棚に追加
/9ページ
『結婚?』
『そう。』
嬉しそうに頷く彼の顔は、幸せが溢れ出したような、ほわんとした、俺が大好きな笑顔だった。
いつもはあっさりと見惚れてしまう俺だけど、この顔をさせているのは、俺じゃないんだ、なんて思うと、胸が疼くから、そっと目を逸らした。
『それでな、ケーゴに、スピーチを頼みたいんだ。』
『スピーチ。』
この人は、なんて残酷な人なんだろう。
『そういうのは、後輩の俺じゃなくて、親ちゃんの上司とか、先輩とか、友達に、頼むべきだと思う。』
『んー、でもな、やっぱり、俺の恋路を支えてくれたのは、ケーゴだからさ。』
彼は、いつも通りの天真爛漫な顔で笑った。
俺が、どんな気持ちでいるかなんて、少しも知らないで。
最初のコメントを投稿しよう!