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数日後、帰りの会を行い、生徒を立たせる。堂本はここに2、3日休みで席が空いていた。
「ちゃんと言うんだ。さようなら」
俺が睨みを利かしながら言うと、渋々ながらも何人かは挨拶するようになった。元凶がいなくなって結束がなくなってきているのか。これなら、1ヶ月くらいで元に戻るだろう。生徒が教室から出ていくのを眺めていると、生徒の1人が教卓の前に来た。確か、横尾だっけ。
「どうした?」
横尾は俺をじっと見つめた後、頭を深々と下げる。
「先生、さようなら」
そして、そそくさと教室を出ていく。きちんと挨拶ができる良い奴もいるじゃないか、効果がここにも出ているとは。危うくニヤつきそうになっていた。ふと、教室を見ると残っていた生徒の視線が横尾を追った後、俺を見つめる。そんなに、変な顔でもしていたか。
そのとき、ふと行方不明の話を思い出す。行方不明になる前、副担任は横尾と一緒にいた。本人にきいたが、どこに行ったかなどは知らないそうだ。
初めてその話を聞いたときから、俺は納得していなかった。既成事実が欲しいがために、大してきいてないだろう。しつこいとクレームがつくとかで。そんなんだから、うやむやになっちまうんだよ。
俺は教室を出て追いかけた。歩くのが遅いのか、まだ廊下にいる。
「横尾。話があるんだが……」
俺の声を聞いて横尾が振り返った瞬間、突然目の前が真っ暗になった。音も何も聞こえない。どうなっているんだ。それに、息が、苦しい……。
おわり
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