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雪が降り、桜が咲き、海に入り、紅葉が広がり、また雪が降り、桜が咲き、海に入り、紅葉が広がった。
留まることを知らない川のように、時間は急速に過ぎ去っていった。
流行りの音楽と共に隣の客の話し声が流れ込んでくるような居酒屋で、カツンと軽快な音を立ててぶつかる二つのビールジョッキ。
光穂の隣には、千尋ではなく別の女性の姿があった。
「最近千尋と会ってないの?高校のときあんなに仲良かったじゃん。やっぱ大学別になっちゃったから?」
お通しの枝豆を数粒口に放り込みながらそう尋ねる彼女は、光穂の高校時代のクラスメイト。
テーブルの上に吊り下げられた小洒落た照明が、光穂の丁寧に飾り立てられた目を誇張させた。半分落とされれた瞼の下で佇む黒い瞳には、一寸の光も宿してはいない。光穂はカラカラに渇いた唇を、気だるげに動かした。
「いや、普通に嫌いだったんだよね」
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