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着信音に飛びつくも、画面に表示された名前に、携帯をベッドに投げつける。今日、奏に何かをしたのは俺の彼女であるコイツで間違いない。恋愛感情のかけらも無いコイツには奏への虐めを辞める事を条件に付き合った。なのに虐めは続いていて、むしろ悪化していた。 激怒する俺に、あろうことか更に脅しをかけて来た。その内容はこれ以上ないくらいに最低で、悪質だった。 一つ、わかったのは俺が奏に関わらない事が、奏を守る唯一の方法だということだ。 俺が奏に構うことが奏を苦しめる原因になる。だから俺は、奏を、好きな人を守る為に距離を置いた。 ―― 「南君」  混在する話し声の中に微かに耳に届いた声。隣にいる彼女を横目で見ると、俺に不機嫌な顔を向けて来た。声の主に心の中で謝り、再び会話を再開しようとすると、今度は少し大きめの、はっきりした声が届いた。いよいよ無視するわけにもいかず、友人達との会話を止める。 「あー…なんか用?」  彼女の逆鱗に触れないよう、なるべく冷淡に接する。でも、久々に見た奏は、明らかに前とは違っていた。表情が暗く、元気がない。 「…今晩少し、時間ありますか。」 「…なんで。」 「……。」 「…ここじゃ言えない事か?」  頷いた奏に、遂に彼女が舌打ちをした。修羅場だと面白おかしく口笛を鳴らし冷やかしてくる友人達を睨んだ。  パン、と軽い音が廊下に響いたのは、一瞬の事だった。 「あのさ、賢斗はわたしの彼氏だから。」     
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