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 俺の名前を呼び造る笑顔に、心臓が締め付けられるように痛んだ。一緒に花を買いに行っていた頃の奏の笑顔と、あまりに違う。  掌にじっとりと、嫌な汗が浮かんできた。乾いた喉に必死に唾液を送り、言葉を紡いだ。 「放課後、教室で待ってろよ。」 今の俺には、これしかできない。それに、今日を逃したら次は無い。そんな予感が脳裏をよぎった。 ――   彼女との予定を踏みにじり、教室で待っていた奏を連れて電車に乗り込む。行き先は告げていなくても、大方検討はついているんだろう。黙って、後をついてくる。  閉店時間が近いせいか、店前に並んでいる花は隙間だらけだった。 店の奥へ入ると、店員が奏にブーケを手渡してきた。俺が一緒に行かなくなってからも毎週、欠かさずこのブーケを買いに来ていたらしい。無くなりそうな時はこうして、取り置きしてくれていたという。  でも、最後の一つだったブーケは、時期の終わりという事で殆どの花がしおれ、売り物にならず下げられたものだった。 「それ、俺が買う。」 「え?」 「いいから。」    店から出て、無言で歩く。辺りはもう暗く、吐く息が白い。 「…少し、時間いいか」  街から離れ、地元の駅の構内にあるベンチに並んで座る。この時間は人通りが少なく、通るとしても年配者が多い。適当に自販機で買った暖かい飲み物を渡す。     
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