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 足元を濡らすその先の人物に問いかける。つい呆れた口調になったのは、これが一度や二度じゃないから。  濡れた髪が掛かっている華奢な肩が僅かに反応した。座り込んでいる身体が動きこっちを振り向けば、悲惨な状態が露わになった。  胸元まである髪はまるで土砂降りにあったかのように垂れ、所々頬に張り付いている。頭からつま先まで水に濡れ、真面目に伸ばされたスカートには水溜りができている。 重みを含んだ前髪から覗く瞳が、俺の瞳を捉えた。 「…南君、何をしているの。」  南君、か。泣いてるもんだと思ったが、余計な心配だったらしい。 「…俺が聞いてんだろうが。」 きょとんとした顔で不思議そうに見つめ返してくる姿に溜息が出た。 「お前さ、嫌ならちゃんと嫌がれよ。」 「何を?」 「虐めだろそれ。何回同じ目に合えば気が済むんだよ」 「…虐めじゃないよ。」  何度このやり取りをしたか、数えきれない。何を言っても無駄だと思いながらも、見かける度に同じような目にあっている頑固者に文句の一つでも言いたくなる。 昔から人に弱みを見せようとしない。自分の事は自分だけで解決しよう抱え込んで、相談も、助けを乞おうとしない。だからか、周りの人間は手を差し伸べるのを躊躇し、いつしか辞めた。     
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