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出てきた入り口を一瞥し、玄関へと歩みを進める。足は玄関へと向いていても、頭の中は置き去りにしたままだ。着替えは持ってるのか。風邪、引くんじゃないか。泣いてるんじゃないか。
進めていた足を思わず止めた。この事を知っているのは、女達以外、俺だけだ。俺が動けば、奏がこういう目に合うことはなくなるかもしれない。
知ってる俺にしか、護れない。
「……」
奏は多分、そんな事望んでいない。奏が、自分は虐められていないと言うなら、俺は今の事を見なかった事にすればいい。
止めていた足を再び玄関へと動かした。
――翌日
「普通に来てんじゃん!」
「どんだけ精神図太いんだよ!」
昨日の女達が、腹を立てて騒いでいる。どうやら奏が学校を休む事を期待していたらしい。見事に期待を裏切られ、自分の席で授業の準備を始めている奏を遠巻きに睨みつけている。
確かに、奏の神経は幼馴染の俺が認める程に太い。ちょっとやそっとではもう、到底参らせる事なんて出来ないくらいに。
だからといって、傷つかない訳じゃない。感情も人並みにある。昨日だって、本当は辛かったはずだ。でもそれを表に出そうとしないのは、頑固さ故だ。
――
「おい、奏。」
「あ、けん…南君。」
放課後、昔負った怪我の定期検査で病院に来た。目の前を通り過ぎようとした奏を呼び止めた。
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