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むっとした。呼び方なんて成長と共に変わるだろうし、それは奏の自由だ。でも別に、今まで通り“賢斗君”と呼べばいいだろうと柄にもなく思った。 前回は、怪我の通院をしていた頃に、病室から花瓶を持って出てくる奏と廊下で鉢合わせた。 その時に初めて、奏がこの病院に見舞いで毎日通っている事を知った。 引き留めたものの、話題がない。女子トイレでした最後の会話も、俺の失言で気まずくなったままだった。控えめに目を見ると、いつもの通りきょとんとした顔で見つめ返された。俺は、この沈黙が苦手だ。 ふと、奏の両手にすっぽりと収まっている小さな向日葵の鉢を見た。花は可愛らしいが、鉢は飾り気のない地味な色合いで折角の花が安っぽくみえる。 「明日、時間あるか?」 「?、うん」 「花、買いに行くぞ」 「え?」 最初に出た言葉がこんな言葉じゃ、いつもの倍、素っ頓狂な顔をされたって文句を言えない。でも、叔母さんには少しでも良いものを贈って欲しかった。 ―― 待ち合わせの三十分前に着いたというのに、既に待ち合わせ場所付近のベンチに座っていた奏に頭を掻いた。 いつもの似合わない制服姿とは違って、今日は女らしさを感じさせる格好をしている。 「晴れてよかったね」 「あー…傘、無駄になった」 「あはは」     
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