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「ぼさっとしてると負けちゃうぞ」
「アイト!」
声のする方を見ると、腕組みをして試合の様子を見ている先生たちの横で、偉そうにアイトが立っていた。どうやら全て彼の仕業らしい。
「ほら、よそ見するな!」
年に数回あるレクリエーション大会で、クラス対抗のドッチボールをする事になった僕たちのクラスは、決勝戦でガキ大将たちのクラスと戦うことになった。
ここぞとばかりにボールをぶつけてくる彼らの攻撃を華麗に避けたアイトは、最終局面で僕にバトンタッチしたのだ。
相手コートにはガキ大将只一人。こちらには、僕と、この一年で随分と女の子らしくなった百瀬さんがいる。彼女も運動できる子だけど、流石にあの強烈な送球は受け止めきれないだろう。
外野からのボールがコートに入り、再び大盛君の手に渡った。大きく振りかぶり、踏みしめた左足が地面に埃を立てる。
剛速球は一直線に百瀬さんに向かっていき、彼女の腕を弾いたボールは、バレーのレシーブのように高く打ち上がった。僕は空かさず走って、ボールをキャッチしたけれど、コートから出てしまったので、所有権は相手に渡る。
「これで終わりだな」
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