アイ ト セイギ

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※  IF、イマジナリーフレンド。  孤独から逃れるために作りだされた架空の友人。僕にはそのIFが、アイトという友人がいた。  彼と思い出は、その存在が見えなくなった時と同時に消滅し、周囲にもその存在を話していなかったので、長年忘れ去られたままだった。  額縁を探していると玄関のチャイムが鳴った。多分、彼女が来たのだろう。 「おじゃましまーす」 「散らかってるけど」 「うわ、滅茶苦茶じゃん」  プリントの山を掻き分けて部屋に入った百瀬さんが、あの絵日記を手に取る。 「これって」 「あー、さっき見つけたんだ」 「アイト、君?」 「え?」  記憶になくても深層心理には深く印象が残っていたのか、僕は知らずのうちに心理学に興味を持つようになっていた。進学する大学でも心理学を専攻する予定だ。 「知ってるの?」 「うん、あれ? でも誰だっけ?」  アイトとの思い出が、色鮮やかに蘇ってくる。もしかしたら、もう一度、彼に会う日は近いのかもしれない。  
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