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「何しようか」
「僕は木陰で休んでいるよ」
「それじゃあ意味がないだろ」
「運動は嫌いなんだ」
「好き嫌いしていたら大きくなれないぞ」
「大丈夫でしょ」
寝ているだけで、身長も体重も大きくなる体に、わざわざ鞭打って運動する必要性を感じない。
「本ばかり読んでるからそうやって捻くれるんだぞ」
「でもさ、二人で何をしようって言うの?」
グランドには幾つものグループがいて、サッカーゴールは上級生たちが支配していた。ジャングルジムやブランコも先客がいて、その輪に入り込む勇気は僕にはなかった。一輪車なんかもあるが僕は乗ることができない。
「仕方ない。鉄棒でもするか」
「えー」
「えー、じゃないよ。それに体育の授業もあるだろ」
僕は逆上がりが苦手だった。
「そうだけど」
「ちょうどいい練習じゃないか」
「わかった」
グランドの端にある鉄棒に向かった僕は、溜息を吐きながら鉄の棒を握り締めた。何で回らないといけないんだと思いながら、勢いをつけて体を持ち上げようとするが、腕の力がたりないのか、ストンと落ちてしまう。
「無理だ」
「諦めるが早いよ!」
そう言って、アイトは簡単にクルクルと回って見せた。そのまま、まるで重力を感じていないように、足だけでぶら下がって回っている。
「どうなってんの、それ?」
「まずはこうやってー」
と擬音語と擬態語のオンパレードな感覚重視のレクチャーをしてくれるが、僕には一切真似できそうにない芸当だった。
「なあ、簡単だろ」
「僕には出来ないってことだけはわかった」
「何でだよ」
それでもアイトに指示されるままに鉄棒に食らいついていると、声をかけられた。
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