アイトと僕と

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 トイレに行ってから教室に戻った僕は、自分の机の前で立ち止まり、深い溜息をついた。 「どうした?」  じっとしたままの僕に、アイトが声をかけてくる。 「何だよ、虫でもいたのか?」  僕の机には鉛筆とペンで落書きがされ、現代アートのようになっていた。椅子には液体ノリが垂らされ、樹液のように光っている。 「おー、これはこれは」  アイトはどこか嬉しそうだった。 「中々ハイセンスだな」 「この教室にはアーティストがいるようだ」  見なくてもわかる。犯人は、ニヤニヤと厭らしい笑い顔を浮かべているのは、このクラスでデカイ顔をしている大盛君たちだ。  一体いつからだろうか。彼らにちょっかいを出されるようになったのは。学年が上がり、二年生になったばかりの頃は何もなかった。と言うより寧ろ、互いに干渉せず、気にもとめない相手だったと思う。それが、つい最近になって、陰湿な嫌がらせをさせるよういなっていた。僕が何かをしたという心当たりはないが、彼のその憎しみ籠もった目を見る限り、何か気に障る所があるのだろう。  遊びに誘われても仲間に入らなかった所為だろうか。それとも、彼が解けなかった問題を僕が簡単に答えてしまったからか。  思い返せば、間接的に何かしているのかもしれないが、こんな悪戯をされるほどのことだろうか。体は大きいが、心の器は随分と小さいんだなと思っていると教室に担任の先生が入ってきた。
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