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「どうしてそんなことするの? 正義君が困っているじゃん」
やられっぱなしで言い返すこともしない僕に腹を立てたのだろうか。それとも単なるお節介か。
宿題のプリントを無理矢理奪われ、あろうことか名前の部分を書き換えて提出されてしまった僕に代わって、百瀬さんが声を上げた。
「何だよ、お前には関係ないだろ」
予想外の相手に狼狽えているのか、大盛君が震えた声を出す。
「宿題は自分でやらないといけないんだよ」
「はぁ? ちゃんと自分でやったし! 大体証拠はどこにあるんだよ」
「それは・・・・・・」
そうだよ、そうだよ、と取巻きたちがここぞとばかりに声を上げている。
証拠なんて言われても、問題のプリントは既に回収されているし、張本人の僕は忘れてしまったと処理されて怒られた後だ。これ以上蒸し返されて先生に知られたら面倒なことになると思い
「もう済んだことだから」
と声をかけたとき、百瀬さんは僕に大声を上げた。
「どうしていつもそうなの? どうして何も言い返さないの?」
涙を浮かべている彼女に、僕は何も言えなくなってしまった。そのまま教室を飛び出した彼女の後を追って、女子たちが「サイテー」という言葉を残して駆けていく。
「ほんとサイテーだな」
「それって僕も含まれる?」
「当たり前だろ」とアイトは呆れたように言った。
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