歓迎ムードじゃないけれど

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 ぼくは壁を強く蹴って、足を踏み鳴らしながら階段を上がった。もう、うんざりだった。いままであれこれ理由をつけて知りたいという気持ちを抑えつけてきたが、もう我慢の限界だ。親戚のおじさんと、おじさんがかくまっている子ども達と仲良くなりたいと思って、なにがわるい?おじさん達のことをもっと知りたいと思って、なにがわるい?おじさんが困っているんだから、力になりたいと思って、なにがわるい?  たしかにおじさんは変人だが、いきなりやってきた面識のない甥を文句も言わずに迎えてくれた。リンとだって少しずつ仲良くなってきたし、アスカとはちゃんと話してみたいと思うようになっていた。母さんと二人きりで暮らしてきたぼくに、四人で食卓を囲む温かさを教えてくれた。なのに、だれもぼくの助けを必要としてくれなかった。ぼくはものすごい疎外感を感じた。  みんなと親しくなりたいと思ったのは、ぼくだけだったのだろうか。外では風が強く吹き、窓を打ちたたいていた。健斗がぼくから去っていったように、ぼくが怒鳴ったせいでおじさん達も離れていってしまうのだろうか。  食事の途中で出てきてしまったので腹が減っていたが、台所に戻る気にはなれなかった。壁を蹴った足がいまになって痛い。ぼくは閉めきった部屋の中でいつの間にか眠ってしまった。
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