歓迎ムードじゃないけれど

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歓迎ムードじゃないけれど

 なんだか、自分のことじゃないみたいだ。昨夜から今朝のできごとがあまりにも非日常じみていて、いま寝転がっている畳の感触すら、新鮮に感じられる。  全開にした窓からは生ぬるい風がたまに吹くだけで、部屋は暑かった。息をするだけでのどが渇く。ぼくは一階の台所へ行くため、狭くて急な階段を下りていった。  古い冷蔵庫が鳴る音に混じって、包丁で軽快に刻む音が聞こえてきた。おじさんは店に出ているはずだ。奥さんでもいるのだろうか。  階段のすぐわきにある台所に入ると、ぼくと同じくらいの背丈の女の子がいた。白いTシャツに短いジーンズを穿き、頭の上で束ねた長い髪は少女の動きに合わせて揺れている。こちらに気づいた少女は、キャベツを刻む包丁の手を止め、少し驚いた顔をした。 「もしかして、新しい子?」  きっとこの子はおじさんの娘なのだ。おじさんと違って、常識があるところを見せようと、ぼくは挨拶をした。 「あっ、あの、こんにちは。ぼく、親戚の藤原慎治といいます。しばらくお世話になります」     
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