河童がいるわけないけれど

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河童がいるわけないけれど

 帰り道、黒こげスパイが駅まえのバス停付近をうろついているのが見えたので、迂回すると、インドカレー屋のまえに人だかりができていた。いつもは、スパイスのいいにおいがするのに、きょうは排気ガスのにおいしかしない。 「芸能人でもいるのかな」  リンが、人垣の隙間から覗きみた。 「あっ、象がいなくなってる」  ぼくとアスカも、人々の頭の隙間から顔を出して見てみると、インドカレー屋の外壁にはめこまれていた象が消え、店内が丸見えになっていた。ポッカリ穴の開いた部分に、よく刑事ドラマで見るような、Keep Outと書かれた、黄色いテープが張られていた。 「トラックでも突っこんだのかな」  ぼくが首を傾げた。 「なんでも、壁にはっついていた象だけ、きれいになくなっちまったらしいぞ」  隣に立っていたおじさんが、教えてくれた。  ピアニカ商店街に入ると、アスカは居酒屋の仕込みに戻り、ぼくとリンはまほう屋に戻った。おじさんに、タピオカからもらったおまもりを渡し、台所のテーブルに地図を広げると、×印が三か所に書かれていた。 「魔獣と妖怪は四匹いるって言っていたのにね」  リンが言った。 「あっ、見て。ここ」     
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