八月三十一日

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八月三十一日

 八月三十一日。  今日はこの町で、一番大きな花火大会のある日だった。  その花火がよく見える、高台の公園。  そこにいるのは、少女と、少女の、二人だけ。 「楽しかったね、夏休み」  少女は少女に、笑顔でそう声を掛ける。  きらきら輝く、向日葵のような笑み。  ぱぁん、しゃらららら  ぱぁん、しゃらららら。  赤、青、オレンジ、緑、白、紫。  終わりを迎えた世界の様に真暗な空に、  色とりどりの、火の花が咲いて。  …そして、散っていく。 「…ええ。  本当に、楽しかったですね」  声を掛けられた少女は、そう微笑みを返す。  儚く消えそうな、陽炎の様な微笑み。  火の花に照らされる少女と少女は、心の底から嬉しそうだった。  少女と少女は語り合う。  この夏にあった事を。  少女と少女は語り合う。  夏より前の事を。  少女と少女は語り合う。  少女と少女が出会った時の事を。  …まるで。  それはまるで、走馬灯の代わりとでも言う様に。  少女は、少女を見る。  火の花に照らされる少女は、泣いていた。  向日葵のように微笑みながら。  大粒の涙を、ぽろぽろ、ぽろぽろ、とめどなく零しながら。 「…――、どうして、泣いているんですか?」     
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