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言われてみるとたしかに思い出せない。友達になったきっかけも、教室での優也の席の場所させも。それでも、納得できないことはあった。
「もし……もしだぞ、優也が言ってることが本当だとするだろ。だとしたらさ、なんで今になってこんなことになってんだよ! こんな……僕はまだまだ優也が必要だと思ってるよ! だったらおかしいだろ、僕の空想の友達が自ら僕が理解できてない状況説明をしてイマジナリーフレンドってわからせるなんてさ! それって僕の前からいなくなるってことなんだろ? 実際にはいないって自覚させるってことなんだから!」
「そこなんだ洋介、この出来事の要点はそこだ。……今、何月か思い出してみろ」
「えっと……三月だよ」
「もうすぐ新学期が始まる。そこでお前は無意識になんとかしなければいけないと思った。このままダラダラしてるわけにはいかないと。イマジナリーフレンドになんて頼らず、自分の力でちゃんと勉強もできて、ちゃんとした友達も作れるようにならないといけないと」
「そんなこと……」
「お前は今お前自身が思ってるほど頭の悪いやつじゃない。お前は最初から自分の置かれてる状況をわかってたんだよ。でも、わかろうとせずに逃避してただけだ」
「……優也」
優也の姿がだんだんと透けて見え始めてきた。
「おっと……やっとちゃんと自覚してきたみたいだな……。お前はもう自分でやっていける! そこは俺が保証してやる! お前の空想としてだけどお前をちゃんと見てきた俺がな!」
「……僕……頑張ってみるよ。お前に心配かけないようにさ……だから、どこかで見守っててくれよな……」
僕は目に涙が溜まり、もう視界が滲んでいた。
「ああ、わかった。…………じゃあ、さよならだ」
その言葉を最後に優也の姿は今までの出来事が夢であったかのようにスッと消えた。
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