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会話が続いていく毎に少しずつ盛り上げるようにテンションを上げていく。作戦通り。
「どんな本を読むんですか?」
「どんな本? えーっと……」
これは困った。僕は漫画は読むけど、おそらくこの人が言っているのは小説などのような文字列が並ぶ本のことだろう。ここで漫画のタイトルなんてあげればここまでの会話の組み立てが台無しになってしまう可能性がある。それはさすがにもったいないと必死に頭を回転させ、こう答えた。
「僕は最近は昔の人が書いた本にハマってるね。夏目漱石とか太宰治とか」
とりあえず聞いたことのある作家なんて言ったらこのくらいの有名なやつしかない。しかし名前は聞いたことがあっても、もちろん作品を読んだことはないのでそれについて掘り下げられるとまずい。なので質問を投げかけられる前にこう続けた。
「君は昔の本よりも最近の本のが好き?」
これでとりあえず安心できる。
「うーん。私は本自体が好きなので、新しさでどっちが好きとかはないですね」
「あー、そういうのいいよね! 僕の考え方が間違ってたかも!」
「いえ、そんなことはないですよ。好みは人それぞれですから」
雑談もそれなりに続いたところでここからが本番だ。今までの会話は最後に繋げるための布石。優也、しっかり見ていろよ。
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