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「僕、夏野洋介っていうんだ。良かったら君の名前を教えてよ」
「私は、西森香織っていいます」
「香織ちゃんか、いい名前だね! 僕たち子供を見るのが好きで、本も好きで。これって運命だと思わない?」
「運命……ですか?」
「そう、運命! きっと今ここで出会うことは最初から決まっていたんだよ」
「あ……えっ?」
「だから僕と友達になろう!」
「友達……ですか? えーっと……」
ピロンッ。
香織ちゃんが答えようとしている途中でどこからか着信音のような音が聞こえた。
「あっ……」
どうやら香織ちゃんの携帯電話が鳴ったらしく、メッセージを確認している。
「あの……」
「ん?」
「話しの途中でごめんなさい。私帰ります」
香織ちゃんはペコッと頭を軽く下げると、走って行ってしまった。
「…………」
僕が呆然と立ったままでいると、少し遠くから見ていた優也がこちらに歩いてきた。
「なんというか、タイミングが悪かったな」
「タイミングの問題なのかね……」
「それにしてもあれだな。最後の運命押しはなんだ?」
「…………」
優也のその言葉に唖然とする。
「お前がやれって言ったんだろ!」
「すまない、そこは冗談のつもりだったんだ。まさか本当にやるとは」
「…………」
再び唖然とする。
「冗談なら冗談だと先に言ってください……」
「気をとりなおして、次のターゲットでも探すか!」
「もう次はいいよ……今日は帰ろうぜ。僕は疲れた……」
「そうか? わかったよ。……じゃあまたな!」
「おう」
公園で優也と解散して、家に帰った。友達作りは失敗。そう簡単にうまくいくなら苦労はしない。まあ、こんなものだろうと思う。
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