屑籠

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バスに乗った迫田くんに手を振る。 迫田くんは吊皮につかまって、笑顔で軽く会釈する。 遠ざかっていくバスの後ろを見ながら、さやかは伸びをした。 今日分かった事は、迫田くんだけに適用できることなのかも知れない。 でも、少なくとも、 母の言っている事は、全部本当ではないわけだ。 近づかない事は必ずしも正しい事じゃないし、 きっと、ポーチで待っていた方がいい場合だってあるだろう。 これって、汚れはじめだろうか? そもそもなぜ、汚れるって母は言うんだろうか。 そんなことを考えながら歩いていたら、家に着いた。 「ただいま。」 「お帰り。遅かったね。誰といたの?」 母の声が今は、さやかにはとがって聞こえる。 「委員会だよ。」 足早に階段を昇り、部屋に入る。 先ずしようと思っていたことがあった。 さやかは胸ポケットから大切そうに 麗子からもらったヘアゴムを取り出すと、勉強机に置いた。 髪の房から、もぎ取るように真っ黒なカラーゴムをはずす。 掌に載ったそれは、まるで自分から剥げおちた 古い皮のようにさやかには見えた。 考えること、たくさんあるなあ。 お別れの挨拶でもするように少しの間見つめると、 さやかは屑籠に、 まるで輪投げでもするようにカラーゴムを放った。
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