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そうなのだ。 汚れちゃいけないはずなのに、 あのポーチの一件から少し経った頃より、 汚してくださいとばかりに体は変化していくのだ。 風呂に入るたびに 自分の体を見てさやかは混乱した。 学校で習う事は、 さやかにとっては絵空事のようなものだった。 見えないもの、頭の中にしか存在しないもの、 遠い、テレビの中で行われる事。 なのにこれは、自分の体に起こる。 汚れてはいけないはずの、 汚れないための努力をしている私にも、 理不尽に起こる。 それが大迫君のような真面目な男子生徒の目まで引くのだろうか。 クロリスのように、 いくら逃げても、速く、力のあるゼフュロスは追ってくる。 一体植物だって、動物だって、 自分の意思とはかかわりなく変化していくことを どう思っているんだろう。 遺伝子情報の通り発現しているんだから仕方がないと 諦めているんだろうか。 大体人間以外の生き物が遺伝子なんて存在を知っているんだろうか。 考えるとさやかは混乱してくる。 最終的には、 母に叱られないように、 中学校時代の平尾さんのように賢く、 そしていつまでも扁平で骨の浮き出たような 痩せた体で居られればいいのに、と 自分を憎んだ。
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