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≪詩季村にて採集した伝説・乙≫
ある時、村に他所から見知らぬ男がやって来た。
彼は村の娘と恋に落ち、夫婦となって村に残った。
二人は幸せそうに暮らしていた。
男はたいそう勤勉で、真面目に働いた。
ある年の冬、冬眠し損なって飢えたクマに村が襲われた。
何人もの村人が犠牲になり、その中には娘も含まれていた。
男は嘆き悲しんだ。
春になると男は山の中で暮らすようになり、やがてオオカミを手なずけて一緒に暮らし始めた。
村の者が彼を見かける度に、オオカミの数はどんどん増え続けていた。
村人たちは男がオオカミを使って妻の仇を討つつもりなのではないのかと噂していた。
その後、彼が敵討ちに成功したかどうかは分からない。
今でも時折、オオカミの遠吠えが聞こえてくるが、彼の姿を見た者は誰もいなかった。
【エノキ・ヤスユキ著『詩季村の伝説』より抜粋】
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