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私の専門は生物学だ。
科学の中でも、取り分け生物学は、ここ数十年で研究内容が最も様変わりした分野だと言えるだろう。
学問は、それがたとえ画期的な内容であっても、時代にそぐわなければ、やがては廃れてしまう。
そして、研究者の労力も、より時代に必要とされる研究へと引き寄せられる傾向にある。
その方が、有名な賞にノミネートされたり、勲章が貰えたりする可能性が高くなることも影響しているようだ。
可視化された評価が重要だということか。
単純に研究予算が付きやすいと言う側面も考えられる。
何れにしても、需要と供給が、バランスを取ろうとする結果なのだろう。
かくして生物学の主役の座は、遺伝子の情報を分析する生命情報学から、絶滅生物の再生を目指す生物回生学へと取って代わられた。
人類が何処に向かっているのか──。
そんなことは分からない。
だが、最近の傾向を分析するなら、自然を人間の手で「より自然な状態にする」ことを目指しているようだ。
しかし、一度人間の手が加われば、それは自然とは呼ばない。
だから端から行動が矛盾している。
だが思想として悪いことではない。
無邪気な正義感だ。
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