第三章 秋

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当初は順調だった。 ジャイアントモアや、リョコウバト、タスマニアタイガーが既に復活を果たしている。 ところが絶滅した時代が古く、サンプル数が限られている場合、計画が頓挫(とんざ)してしまうことも多かった。 個体の復活に(とど)まり、生態系に組み込むまでには至らないのだ。 ちょうど、その頃だった。 人類はタイムマシンの開発に成功し、過去に行けるようになった。 (いにしえ)のSF映画のような展開が実際に起きた。 タイムトラベルの原理は良く分からない──というよりは仕組みも製法も極秘扱いで、公開されていない。 確かに、悪用されては一大事だし、極秘なのは致し方ないだろう。 分かっているのは、シャフトと呼ばれる専用の識別札を(たずさ)えていなくては、現在に戻って来られなくなるということ。 タイムマシンの存在自体も(おおやけ)にはされておらず、ごく限られた一部の者にしか知らされていない。 我々の研究チームに知らされたのが最近なだけで、そもそももっと昔からあったのかもしれない。 可能性だけならいくらでも考えられる。 この世界が全て仮想現実の中のプログラムに過ぎず、タイムトラベルで過去に戻っている訳ではなく、いわゆるシミュレーション世界へ入っているだけの可能性だって十分にあり得る。 タイムマシンは、過去にはどれほど昔であっても行けるという。 また、過去に行った者を現在まで連れ戻すことはできる。 だが──未来には行けない。 これも本当にできないのか、可能だが禁止にしているだけなのかは判らない。
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