彼女に花束を

3/7
1人が本棚に入れています
本棚に追加
/7ページ
 誰が見てもわかる。即死だった。璃子の鮮血がアスファルトに飛び散っていて、血生臭い匂いが満ちていた。そして、僕は璃子、璃子だったものに近づいて手に触れようと。  そこからは覚えてない。気を失ったらしく、気が付いたら病院の天井を見上げていた。そして、重要参考人というのだろうか? 僕は詳しくないので分からないが、警察署にて刑事さんが様々なことを聞いてきた。  璃子はとあるビルの屋上から落下し、死亡したことが分かった。当初は自殺とも考えられていたが、しばらくして、犯人と思われる女が逮捕された。動機も何もかも僕には分からないが、どうでもいい。  恋人を殺された人が復讐に囚われて――、何てよくある話だが、どうやら僕はそうはならなかった。璃子が死んだ。それはどうしようもない事実で現実だ。犯人の動機を知ろうが、犯人に復讐をしようが、璃子が帰ってこないのであれば、全てどうでもいい。 「ニュースをお伝えします。……に起きた女性が屋上から落下し死亡した事件ですが、新たな情報が入ってきたようです。当初、警察は自殺の線で調べをしていましたが、新たに犯人と思われる女性が浮上したとのことで……。容疑者の女性は調べに対し容疑を否認しているものの支離滅裂な証言をしており……」  そんな、定型文を垂れ流すだけのニュースも、他人事のように死んだ目で聞き流していた。     
/7ページ

最初のコメントを投稿しよう!