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信じられないし、信じたくないし、どれだけ経ってもまだいつものようにゲームにログインしたら、その内ヒョコっときみがログインしてくる気がした。
今だってずっと待ってるのに、きみは未だにログインしてこない。
『リアルオンライン』は一度ログアウトすれば、もう二度とログインすることは出来ない。
存在する誰もがある日突然、どこかの国のサーバーの『誰か』としてログインし、そしていつか必ず強制的にログアウトされられてしまう。
生まれたときから課せられた無数のクエスト。
迫られる数多の選択肢。
ステータスを磨け。
ジョブを決めろ。
ノルマをこなせ。
きみはゲーム内では常にブレーンとして私たちを支えてくれた。
きみの作戦で倒せた敵、こなせたクエストは沢山ある。
だからこそ、力を発揮できない『リアルオンライン』に、きみは疲れてしまったのかな。
戦う術がない中で、たった一人、モンスターと向き合うのは、とても苦しくて辛かったよね。
きっと沢山傷ついて、それを癒す術も、見つからなかった。
でも『リアルオンライン』でしか出来ないこともあるってこと、きみは知ってた?
それは実際にきみに会って、目の前のきみと、直接話すこと。
苦しむきみの手を、皆で握ってあげること。
それが出来なかったことを、わたし達仲間はとても悔やんで悔やんで、悔やんでいる。
今きみが居るのは『天界オンライン』。
そこは一体どんなところだろう?
楽しいこと、美味しいもの、沢山ある?
いつもの挨拶も。
何気ないおしゃべりも。
もう出来ないことが寂しくて悲しくて、わたし達が沢山沢山泣いたこと、そっちからは見えていたかな。
いつかわたし達が『天界オンライン』にログインしたら、そのときは、きみが『リアルオンライン』をログアウトした理由を、お酒でも片手に話して欲しい。
場合によっては泣いた分だけ、一発二発、殴ってしまうかも。
でも私はきみの分まで、まだもう少し、高難易度の『リアルオンライン』で足掻いてみる。
だからそれまでは、もうちょっとだけ。
「おつかれ様。───おやすみ」
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