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僕の人生は取捨選択で出来ている。
不要なものは全て切り捨てて、必要なものだけを選び取ること。それが母からの教えだ。
母子家庭で育った僕は、幼い頃から母親には毎日のように取捨選択を迫られていた。
母は潔癖とも言えるほどの完璧主義で、父は逆に大雑把でいい加減な人間だったらしい。
母は、そんな父を必要ないものだと判断し、切り捨てた。
幼い頃に母が言った言葉を今でも覚えている。
「大輔は、将来は立派な大学を出て、一流の会社に勤めるのよ。その為に必要なものは、お母さんが全て与えてあげるからね。お父さんなんか必要ないのよ。だから、大輔も必要ないものは切り捨てて、必要なものだけを選ぶの。そうすれば、きっと幸せになれるからね」
この言葉を聞いた当時は、幼くて意味がよくわからなかったが、母にとって父は必要ない人間だったのだということは理解した。
両親の離婚が成立してからは、母の徹底した管理生活が始まった。
睡眠時間はきっちり8時間。起床後は体操と軽い運動。そして朝食を摂った後は学校。
学校から帰ると心身を鍛える為の空手や、日によって違ういくつかの習い事。そして塾でも勉強。
塾から帰って夕食を摂った後は、寝る前に今日一日で覚えたことを復習する為に再び勉強。
当然だが、食事の内容は栄養管理も徹底されており、オヤツなどの間食は全く許されなかった。
漫画やゲームと言った娯楽も一切ない。
漫画、ゲーム、オヤツ。これらは僕の人生において必要のないものだ。切り捨てなければならない。
自分にそう言い聞かせて、僕は母親の敷いたレールの上を歩いていく。
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