7人が本棚に入れています
本棚に追加
小学校2年生だった頃、隣の席の女の子が声をかけてきた。
「消しゴム忘れちゃったから貸してほしいな」
「構わないよ」
そう言って、僕は使い古した消しゴムを彼女に手渡した。
「それあげるよ。僕は新しい消しゴム使うから」
「いいの? ありがとう」
使い古した残り少ない消しゴムを貰って喜ぶ彼女の笑顔が、何故かとてもまぶしく見えた。
――翌日。彼女は消しゴムのお礼にと、可愛らしいキャラクターの鉛筆をプレゼントしてくれた。
「あ、ありがとう」
正直、とても嬉しかった。学校の友達から物を貰うなんて今までに無かったことだ。
「このキャラ可愛いでしょ! 私も使ってるからお揃いだよ」
そう言って、彼女はニコニコと同じキャラクターの鉛筆を取り出して使う。
彼女の笑顔を見た瞬間、僕はこれが初恋だということに気付いた。
――夜、自分の部屋で彼女からもらった鉛筆を使いながら勉強に励む。
コンコン。
「大輔、ハーブティーが入ったからお飲みなさい」
母親が部屋に入ってきて、僕の机の上にハーブティーを置いてくれる。
「あら? 大輔、その鉛筆はどうしたの?」
「あ、これ……クラスの女の子から貰ったんだ」
「何だか頭の悪そうなキャラクターね。そんな鉛筆を使ってる子と仲良くなったら、大輔まで頭が悪くなってしまうわ。鉛筆ならお母さんがちゃんとしたのを買ってあげてるでしょう? その鉛筆はすぐに返しなさい。あと、その子とはもう話しちゃ駄目よ」
「あ……うん……」
――翌日。僕は鉛筆を彼女に返して、こう告げる。
「ごめん。君とはもう話さないから、僕にも話しかけないで」
「え……どうして?」
「うるさいな。話しかけるな」
そして、僕は初恋を切り捨てた。
最初のコメントを投稿しよう!