7人が本棚に入れています
本棚に追加
無事に大学を卒業して、大手企業に就職することが決まった僕は、やっと親孝行することが出来たと思った。
母さんも喜んでくれている。
それから僕の社会人生活が始まり、慣れない仕事を早く覚えられるように努力した。
しかし、仕事になると学業とは違い、知識を身に着けるだけでは上手くいかないことを知った。
今日も、上司の叱咤が響き渡る。
「君、なんだねこの企画書は? こんなんじゃ使い物にならんよ」
「す……すみません」
「君は学校では優秀だったようだが、社会ではそんなことは関係ない。どれだけ結果を出せるかが重要なんだ。そもそも君は、コミュニケーション能力が少し欠けている。もっと色んな人と触れ合って視野を広げたほうがいい」
そう言われて、僕は少し落ち込みながら自席へ戻る。
その時、同僚の女性が話しかけてきた。
「あんまり気にしないほうがいいよ。あの上司、口うるさくて有名なの。適当に頭下げて、心の中でアッカンベーってしておけば大丈夫だから」
そう言って彼女は、僕を元気づけようとしてくれた。
正直、僕はそんな彼女に励まされて、いつの間にか恋に落ちていた。
もう昔と違い、今なら恋愛をしても母さんは許してくれるだろう。
最初のコメントを投稿しよう!