7人が本棚に入れています
本棚に追加
それから僕は、自分に釣り合う女性を探したが、そのような女性と必ずしも付き合えるわけではない。
気付けば、僕は独身のまま40歳を迎えていた。
仕事は完璧に上手くいってるとまでは言えないが、それなりに苦労しながら何とかやってきてる。
昔、母さんから教わった通り、必要ないものは切り捨てて、必要なものだけを選び取って生きている。
僕は昔から、色々なものを切り捨ててきた。
オヤツ、漫画、ゲーム、友達、初恋、学校生活、自分の感情……そして香織。
それらを捨てて勉学に励み、ひたすら努力をし続けて、一流の企業に入社することが出来た。
ただ、40歳を過ぎても役職はなく、年下の上司にあごで使われる日々だ。
これが僕の歩みたかった人生なのだろうか。
いや、まだ足りないだけなんだ。
僕がこんな風に思うということは、まだ切り捨てられていない無駄な感情があるからだ。
無駄な感情は切り捨てなければ。
今までも、これからも、必要のないものは全て切り捨てる。
そうすれば、きっと幸せになれるはずだ。
幼い頃に聞いた母の言葉を思い出す。
「大輔は、将来は立派な大学を出て、一流の会社に勤めるのよ。その為に必要なものは、お母さんが全て与えてあげるからね。お父さんなんか必要ないのよ。だから、大輔も必要ないものは切り捨てて、必要なものだけを選ぶの。そうすれば、きっと幸せになれるからね」
そう……。幸せになる為には、もっと取捨選択をしなければ。
最初のコメントを投稿しよう!