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「摩周湖のカッパが人を食べるならあの近辺で行方不明事件とか殺人事件が頻発してるはずですけどそんな情報はないですよ」 「木下くぅん、摩周湖のカッパならさ、極々一部でだけどネットで話題になってるし、いなくても調査の結果存在しなかったって結論を記事に出来るじゃあん。プロビデンスの目を調査してさ、ライブ感のある記事になるのって話なの。既存の情報のまとめ直しみたいな記事はさ、ネットが有るから需要がないよぉ?」 「先輩は何か面白いネタをつかんだんじゃないですか? カッパを後回しにしたくなるような」 「そうなの?」  栗林の無垢な瞳が芦屋麻衣の顔を見上げた。摩周湖のカッパの調査を担当していた以上、「こっちの方が面白いから」みたいな理由ではプロビデンスの目を調査したいとは自分からは言いだしにくい。  だからそれが言える流れにアシストしてくれた木下に芦屋麻衣は感謝した。もっとも、「面白い」なんて軽い理由ではないが。  芦屋麻衣は一度大きく深呼吸をする。そして覚悟を決めながら重々しく言葉を紡いだ。 「先日、某有名研究機関の研究員が……自殺しました。その人は常々、この世界の構造を解き明かしたい。知れるならこの世界の全てを知りたいと溢していた科学信奉者で、いわゆるオカルトというものにはとても否定的なスタンスを取っていました」     
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