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朝日が眩しくて目が覚めた。寝惚け眼で上体を起こすと、心美が晶美にご飯を食べさせているのが見えて。ヤカンが沸騰したみたいに、パチンと目が覚めた。
「あ!俺が飯食わせる!」
慌ててベッドから飛び起きた。その姿を見て、吹き出して笑う彼女。晶美も黒々とした目を見開いて俺を見ると、長い睫毛をパチパチと揺らした。
ああ、可愛い。2人揃って愛おし過ぎる。俺はなんて幸せなんだ。
「おはよう晶美~」
自分でも分かるくらいデレデレと娘の顔を覗き込んだら、彼女は盛大な溜め息を吐いて席を譲ってくれた。
向かいに座ると、クルクル動く大きな瞳。口の周りは食べこぼしで汚れている。「あ~ん」と一緒に口を開いて、スプーンで離乳食をそこへ運んだ。
「ね、今日どこか行くの?」
俺のトーストを焼きながら、キッチンから彼女が尋ねる。
今日の予定は特に無い。と言うより、晶美が生まれてからは、休日にあまり予定を入れたくない。ただでさえ仕事で一緒に居る時間が少ないのに、休日っていうチャンスを逃したら、起きている晶美を眺める時間がなくなってしまう。
「ん?今日は晶美とイチャイチャする日」
語尾にハートを付けて答えたら、彼女は素っ気なく「あ、そうなんだ」と答えた。心なしか、言い方が冷たい気がする。もしかして、だけど、
「ヤキモチ?」
ニヤニヤしながら尋ねたら、「呆れただけなんだけど」と鼻で笑われた。
「パパこそ、2人目が息子だったらヤキモチ妬くんじゃない?」
皮肉たっぷりにそう言われたので、その状況を想像した。赤ん坊の時は平気だろうけど、どんどん男になっていく息子と、最愛の彼女が隣を並んで歩いていたら。俺はどう思うんだろうか。きっと、少しくらい、面白くないような気がする。
「それはそうかも」
呟くと、彼女は目を丸くした。
「えっ、本気にしないでよ、」
そんなことを言われたって。もしかしたら、もしかするかもしれない。だって、そんな話をテレビで見たことがある。
「俺の心美は絶対譲らない。なー、晶美!」
そう言ったら、彼女はもう何も言わなくなった。
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