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隣の小動物が、頭に花を咲かせて、耳をパタパタさせていた。私の腕に抱きついて、「心美!昨日のイケメン!」と小声で叫んでいる。
そんな事より、私は人事部長が言った彼の名前を聞いて驚いていた。
皇 千晶。
珍しい苗字な上に、女みたいな名前。こんな取り合わせの人間に、人生で2度も出会うだろうか。同一人物である他あり得ない。
名前を言った後に、どこの会社で幾らの売り上げを出して、彼がいかに優秀かという話を散々していたが、私の耳には届いていなかった。
中2の時の彼は、優しくて明るいだけが取り柄のような人で。それだけで目が離せなかったのに、いつの間にこんなにキラキラした人になったのか。
長身で、服の上からだと分からないけど多分引き締まってそうで、純粋そうな透き通った瞳、爽やかな笑顔。確かに昔から鼻筋は通ってたし口は大きかったから、面影はあると言えばあるけど。
彼が本社の営業部に配属と聞いて、本社勤務の女性社員が騒ついたのは、誰もが感じ取っただろう。
自己紹介の後に「よろしくお願いします」と飛び切りの営業スマイルという爆弾を女性陣に投下して、彼は自分の列に戻った。
本社営業部の島は総務部の隣。私は波乱の幕開けを感じていた。
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