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「連絡先をよく聞かれたとか?」
「…まあ、それもある」
「他は?」
「あとは…良いなと思った子を誘って、断られたことはない…とか?」
チラリ、とまた私の様子を伺う彼。
内心、「そんなに女の子を誘ってたんだ」と驚いていた。10年近く前の話だし、今更どうこう言ったって仕方無いんだけど。自分で訊いておいて、面白くはない。
顔にそう出ていたのか、彼は苦笑した。
「心美は俺のこと真面目って言うけど、そんなに真面目じゃないよ。もうこの際だから話すけど、前の会社も女関係が拗れたから辞めただけだし」
「ええっ、そうなの?」
衝撃だった。あまりにもオーバーリアクションをしてしまったので、彼は「一応名誉のために言うと、俺が手を出した訳じゃないから!」と付け足した。
「元々引き抜きの話があってどうしようかと思ってた時の話なんだけど、」
「うん、」
「俺の上司と、同じ部署の事務の子が、俺のこと好きで…」
もうその時点でややこしいな、と思った。私も営業部の人に言い寄られたりしてたけど、他部署だから何とかなっていた。同じ部署なんて、面倒臭くて仕方無い。
「何となく気付いてたんだけど、仕事上 面倒だからどっちにも愛想良くしてたら、最終的にそこがモメちゃって」
さっきドラマみたいな事は無いって言ったけど、十分ドラマだ。女の修羅場。想像するだけで震える。
「一回派遣の子に告白されたことがあって断ったら次の日から会社に来なくなってさ…だから今回は上手く切りぬけようとしたんだけど、」
彼は悪く無いと思った。彼の事を好きな故に自然と肩を持ってしまっているのかもしれないけど。
辞められたら困るから機嫌を取ったら、勝手に女同士でモメただけだ。彼に落ち度は無い気がする。どっちにも手を出していた、とかなら別だけど。
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