歓迎会

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金曜日の夜。 (恵美梨が)待ちに待った歓迎会の日だ。 本社勤務の総勢50名での飲み会という事もあり、居酒屋の座敷はかなり混沌としていていた。 「静粛に!静粛に!」 営業部長が、どこから持ってきたのか、フライパンとおたまで大きな音を出す。 「では主役の皇が、乾杯の音頭を取ります!」 営業部から冷やかしの声が上がる。私はこの営業のノリが大嫌いだった。今の会社に入って不満なのは、この学生ノリだけだ。 半ば押されるようにして出てきた主役は、相変わらずよく通る声で言った。 「今日は俺の為にありがとうございます!皆さんと仲良くなりたいので、遠慮せず何でも聞いて下さい!」 すると「彼女は何人いますか?」とか「バナナはお菓子に入りますか?」とか野次が飛ぶ。 彼はそれを笑い飛ばした。 「えー、じゃあなんかもう先輩たちが面倒くさいので、とりあえず乾杯!」 ーーー乾杯! 私は隣の恵美梨とグラスをぶつけた。
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