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彼女がシャワーを浴びている間に洗い物をして、俺はその後 湯船でゆっくりさせてもらった。風呂場から出ると、ランプだけが点いた薄暗い部屋で、ベッドの脇に座って愛娘を覗き込む、彼女の背中が目に入った。
俺に気付くと、「シー」と指を唇に当てる。
「…起きちゃった?」
「ん、ちょっとぐずった」
隣に座って晶美の顔を眺めると、目尻がキラキラ光っているのが見えた。
俺は、機嫌の良い晶美しか知らない。いつもニコニコ明るくて、毎日少しずつ言葉を覚えて。いつの間にか歩けるようになって、俺のことを呼んで。
俺がいない時も眠りこけてるときも、心美は晶美をずっと側で見守ってくれてるんだよな。
そう思うと、彼女への感謝が口をついて出ていた。
「いつも、ありがとう」
肩を抱き寄せて耳に唇を寄せると、彼女は「なに、突然」って微笑んだ。
「別に、いつも思ってるよ」
「…の割には初めて言われたけど?」
「はいはい、これからはちゃんと言います」
逃げるみたいに布団に潜り込んだら、彼女も笑いながら入って来た。
腕を差し出すと、その上に頭を乗せてくれて。抱き寄せて、頭を撫でた。いつまでこうやって恋人同士みたいに眠れるかは分からないけど、少しでも長くそうありたい。
彼女の寝息を聞きながら、深い眠りに落ちた。
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