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翌日、体育祭当日。
開会式の前から、彼の目は血走っていた。
「…誰だ、晶美の彼氏…どれだ…?」
「パパ、気持ち悪すぎ」
双眼鏡片手に生徒のテントを睨み付ける父親を、小5の千恵美が蔑んでいた。頼むから、父親の評価を下げる真似はやめて欲しい。
「居たら教えてあげるから、」
「えっ、ママ知ってんの!?」
「知ってるよ、写真見せて貰ったもん。格好良い子だったよ」
すると、口をパクパクさせる彼。色々な衝撃が頭を駆け巡っているらしい。
「そう言えば名前は?」
「え?」
「彼氏の名前!」
「ああ、一ノ瀬 大翔くん」
「名前までイケメンだな!」
いや、貴方の「皇 千晶」も負けてないよ、と内心ツッコむ。
そんな事を言っていると、
「あ、居た」
見つけてしまった、晶美の彼氏。友達数名で、昇降口から出てきたところだった。
写真よりも断然綺麗な顔立ち。切れ長の目、高い鼻。色素の薄い髪が、風に靡いてキラキラと光っている。
「え、どれどれ!?」
「どれ~?」
「あれ、」
指差すと、2人が彼を凝視した。
「わ、格好良い!お姉ちゃん、やるう!」
「そうか?ちょっとチャラいだけだよ、ああいうのが勘違いでモテる世代なの!中2は!」
「…近くに親御さんいらっしゃるかもしれないから、やめてくれない?」
宥めていると、その陰から晶美が顔を出した。途端に、彼の顔が輝く。
「あっ!晶美…ーーー」
呼びかけようとして、固まった。彼氏が、晶美の手を握ったのだ。
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