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歓迎会
「皇くんの歓迎会やろうよ!入社歓迎会!」
恵美梨はいつになく張り切っていた。
パソコンのキーを叩く私の耳元で、尻尾を振っている。
「ねえ心美、聞いてる?」
「聞いてるよ、ポリシーはどうなったの?」
「ソレはソレ、コレはコレよ!」
私は呆れて溜め息をついた。
皇 千晶が初恋の君だと言うことを、恵美梨にはまだ言っていない。「やっぱり心美、面食いじゃん!」とかとやかく言われるのは嫌だったし、恵美梨のことは好きだけど学生時代のことまで首を突っ込まれるのも嫌だった。
それに恵美梨は、どうやら皇 千晶を本気で狙いに行くスタンスのようだ。気を遣わせて、恵美梨との関係が拗れるのも面倒だった。
「皇くん、彼女居るのかなあ」
「本人に訊けば?」
「それが訊きたいから歓迎会するの!お近付きにならなくちゃ!」
「…そこに歓迎の気持ちはないの?」
口を尖らせる恵美梨を見て、私は笑った。少し、苛めすぎたらしい。彼女の頭を撫でる。
「他部署の人なんだから、私たちで言っててもしょうがないでしょ。部長に相談してみたら?」
「そっか、そうだよね!」
恵美梨は立ち上がり、軽い足取りで部長のデスクに向かった。本当に、恵美梨は可愛い。素直で明るくて。
それに比べて私は、見た目だけで中身が空っぽだ。
5分後、恵美梨が嬉しそうに帰ってきた。
「心美も来てくれるよね?」って可愛くお願いされて、もちろん断ることは出来なかった。
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