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「どっちにしようかな~」
焼きドーナツはプレーンの他、抹茶味、ラズベリー味、人参味、トマト味、カボチャ味とカラフルで身体に優しそうなものが並んでいる。
焼きドーナツにしようか、ロールケーキにしようか迷っていると、えりさんが
「どっちも食べちゃって大丈夫ですよ。数はありますから」
と言うので、遠慮なく人参味の焼きドーナツを確保しつつ、ロールケーキに手を伸ばす。
ロールケーキは紅茶アップル……ではなかった。
「これ……モンブラン、ですね。あ、でも今日は涼しいし、モンブランも当たりかも」
中の生クリームに粒の大きな栗がゴロゴロ入っていて、表面には栗のクリームが細い線状にいくつも折り重なっている。
これはこれで美味しいのでアリだな、なんて思っていると。
「あー……票数は紅茶アップルが多かったんですけどね」
私の言葉にえりさんが気まずそうに答えた。
「紅茶アップルにしなかったのには少々理由がありまして……」
と、えりさんが自分のパソコンのOutlookを開いて見せてくれた。
そこに表示されたのは--。
モンブランモンブランモンブランモンブラン
モンブランモンブランモンブランモンブラン
モンブランモンブランモンブランモンブラン
モンブランモンブランモンブランモンブラン
モンブランモンブランモンブランモンブラン
無数の『モンブラン』の文字。
「こっ、これは……」
先日の一件が甦り、思わず身構える。
すると、えりさんの口から思わぬ言葉が漏れた。
「佐久間さんから送られてきまして……モンブランじゃないと呪われるかな、と……」
ふと、キャビネットを見上げると、いつもクールな佐久間さんが嬉しそうにモンブランを食べていた。
--管理本部は今日も平和だった。
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