労務のお仕事 【一冊のノート】

一冊のノート

「うわ…………。コレ、ちょっとヤバくないですか？」

　と言って宮城課長が皆に見せてくれたノートは営業さんが入社した時にメモを取ったと思われる「営業の極意」やら「心得」などが書かれていた。

「……書かされた感、満載なんですけど」

　と、笑顔で次のページをめくった瞬間。

　真夏なのに部屋の温度が２度下がった－－ように思えた。

　そこに書かれていたのは－－。

『光が主流』

　という言葉。

　これがノート一面に。

　つまり－－。

　光が主流　光が主流　光が主流　光が主流
　光が主流　光が主流　光が主流　光が主流
　光が主流　光が主流　光が主流　光が主流
　光が主流　光が主流　光が主流　光が主流
　光が主流　光が主流　光が主流　光が主流
　光が主流　光が主流　光が主流　光が主流
　光が主流　光が主流　光が主流　光が主流
　光が主流　光が主流　光が主流　光が主流
　光が主流　光が主流　光が主流　光が主流

　まるで何かの呪いかのようにノートの片側１ページにびっしりと書き占められていた。

　ここは電話、インターネットなどの通信業務を生業とするコールセンター会社。
　電話やインターネット回線の契約を電話で獲得するのが営業の仕事だ。

『光が主流』

　とはインターネット回線において、光回線が主流となっている今の時代において、未だにアナログ回線を使っている家庭も多く、そういった家庭から契約を獲得する為の文言なのだろう。