右手に剣を持つ少女

3/3
前へ
/3ページ
次へ
「だ、大丈夫?」 声が澄んできれい。 淀む意識の中、少しずつ明るさが戻った。 まぶしい。 「あ、あたしどうした?」 「あ~良かった。立てる?」 ゆっくり立って、何気に彼女の目を見た。 普通に黒い。いや、左目が少し青いかな? 「ねえ、何があったの?」 「…見えてた?」 「何が?」 彼女は少し下を向いて考えて、 「…き、急に倒れたから…」 「あ、あ~ごめん。」 少し間が開き、 「大丈夫だったら良かった。じゃ、」 右手を挙げて立ち去る彼女。 右手にはもう青い光は無い。 私は少し戸惑った。 ふわりと丘をかけ上がる風が私の後を押した。 2、3歩歩いてふと気がついた。 私の周りに白いふわふわした半透明の“何か”が居た。 風に巻かれるようにふわふわと現れては消え、二つ、三つと… 手を出すとふわりと逃げる。 「あ、これもしかして?」 おかあさんが言ってた“あれ” 「わあ~」 すごく嬉しくなった。 今、おかあさんと同じ時間の中に居る。 はしゃぎ、笑っていた。 彼女が向こうから見ていた。 目があった。 間が長く感じた。 距離感が判らなくなる。 彼女の方から目を反らした。 建物の間に消えていった。 薄いグレーの影と共に… ううん、グレーじゃないかもしれない。 少し温かく感じたから… 少し反対に歩いた。 でも、気になって… 彼女の跡を追っていた。 小さな酒屋さんの脇に小路があって、小さな石の橋を通った。 すごく澄んだ水が流れてて、緩やかな風が心地よく吹いていた。 高い石垣の脇道を抜けると左手の細道に登って行く。 彼女がそこに居る確証も無いのに、何故だかそこを通っていた。 舗装も無く草が茂り、周りの竹林からの木漏れ陽が眩しかった。 しばらく進むと、急に冷えてきた。 湿度が高く感じる。 急に空気が変わった。 強く緊張した空気? 透明感が増して、重い空気? 足を止め、周りを見渡すと、右手の土手に切れ目があった。 中を覗き込むと、急に冷たい空気の層があった。 少しの段差を登ると… 彼女が居た。
/3ページ

最初のコメントを投稿しよう!

0人が本棚に入れています
本棚に追加