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「だ、大丈夫?」
声が澄んできれい。
淀む意識の中、少しずつ明るさが戻った。
まぶしい。
「あ、あたしどうした?」
「あ~良かった。立てる?」
ゆっくり立って、何気に彼女の目を見た。
普通に黒い。いや、左目が少し青いかな?
「ねえ、何があったの?」
「…見えてた?」
「何が?」
彼女は少し下を向いて考えて、
「…き、急に倒れたから…」
「あ、あ~ごめん。」
少し間が開き、
「大丈夫だったら良かった。じゃ、」
右手を挙げて立ち去る彼女。
右手にはもう青い光は無い。
私は少し戸惑った。
ふわりと丘をかけ上がる風が私の後を押した。
2、3歩歩いてふと気がついた。
私の周りに白いふわふわした半透明の“何か”が居た。
風に巻かれるようにふわふわと現れては消え、二つ、三つと…
手を出すとふわりと逃げる。
「あ、これもしかして?」
おかあさんが言ってた“あれ”
「わあ~」
すごく嬉しくなった。
今、おかあさんと同じ時間の中に居る。
はしゃぎ、笑っていた。
彼女が向こうから見ていた。
目があった。
間が長く感じた。
距離感が判らなくなる。
彼女の方から目を反らした。
建物の間に消えていった。
薄いグレーの影と共に…
ううん、グレーじゃないかもしれない。
少し温かく感じたから…
少し反対に歩いた。
でも、気になって…
彼女の跡を追っていた。
小さな酒屋さんの脇に小路があって、小さな石の橋を通った。
すごく澄んだ水が流れてて、緩やかな風が心地よく吹いていた。
高い石垣の脇道を抜けると左手の細道に登って行く。
彼女がそこに居る確証も無いのに、何故だかそこを通っていた。
舗装も無く草が茂り、周りの竹林からの木漏れ陽が眩しかった。
しばらく進むと、急に冷えてきた。
湿度が高く感じる。
急に空気が変わった。
強く緊張した空気?
透明感が増して、重い空気?
足を止め、周りを見渡すと、右手の土手に切れ目があった。
中を覗き込むと、急に冷たい空気の層があった。
少しの段差を登ると…
彼女が居た。
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