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物語ならば悪役は正義の味方に倒されるのが世の常。
でも物語の世界とは違って、現実はそう甘くない。
品行方正にやっていても、上へのし上がる事なんて出来ないのよ。
あんな様々な思惑が絡み、どろどろとした貴族社会ではね。
邪魔になる女は蹴落とし、不要な女を切り捨て、自分の理になるものを傍に置く。
時には白を黒に染め上げ、断罪する事も何度もあったわ。
そうして自分の地位を、居場所を確立し、皆が私にひれ伏し、恐怖に慄く姿を楽しんでいた昔の自分。
そんな私は貴族社会の中心人物まで上り詰めると、王子と政略結婚を果たす。
貴族女性の誰もがうらやむ頂点にたった私だったが……全く幸せではなかった。
政略結婚に愛など微塵もなく、王子は愛人を作り、私はお飾りの王妃にそえられる。
子を作る為だけに体をあわせ、会話など一切なく、私はいつも孤独だった。
そんな私はとても惨めで悔しくて……でもそれを認める事なんて無駄に高いプライド許さなかった……。
そうして苛立ちをぶつけるように、メイドや部下に当たり散らした私の傍には……気が付けば誰もいなくなっていた。
過去の私がどうやって死んだのかは思い出せないが……きっとろくでもない最後だったのだろう。
私を恨み妬む者はたくさんいる。
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